嚥下機能低下が睡眠の質低下につながる?
皆さんこんにちは。
千葉県市川市にある三浦歯科医院の院長、三浦靖です。
『健康いちかわ21』はご存知でしょうか。
健康いちかわ21とは、今後の高齢化の進行を見据えて、子どもから高齢者までの全ての方が健やかで心豊かに生活できる「誰もが健康なまち」づくりを基礎理念として策定された市川市の健康増進計画で、令和7年度末までが第2次としており、市を上げて健康維持を推進しています。
その中でも高齢者の健康維持は、身体機能だけでなく、心身の充実感や生活の質の向上も含まれます。
そして、高齢者にとって「睡眠の質」が全身の健康を左右する要因であることは、これまでにも多くの研究で指摘されてきました。
しかし、今回の研究で新たに注目すべき点は、「嚥下機能(食べ物や飲み物を飲み込んでから胃へ送り込まれる一連の動作)」と「睡眠の質」に関連性が見出されたことです。
広島大学と名古屋大学の研究グループが行った調査によると、日本の60歳以上の高齢者を対象に、嚥下機能が低下すると睡眠の質も低下するという結果が示されています。
高齢者の健康を支えるうえで、嚥下機能を維持することの重要性が再確認されました。
嚥下機能の低下が睡眠に与える影響
年齢とともに嚥下機能が低下すると、誤嚥による咳やむせが発生しやすくなります。
これは昼間の食事中だけでなく、睡眠中にも問題を引き起こすことが報告されています。
睡眠中に嚥下機能がうまく働かないことで、身体は気道を守ろうと無意識に咳き込むなどの反応を示しますが、これが睡眠の妨げとなり睡眠の質の低下につながるのです。
特に夜間に何度も目が覚めることで、深い睡眠がとれなくなり、日中の眠気や倦怠感を引き起こし日常生活に支障が出る可能性があります。
睡眠と嚥下機能の相互関係
今回の研究では、嚥下機能の低下と睡眠の質の関連を示すデータが取得されました。
研究対象となった高齢者の約28%が嚥下機能にリスクを抱えており、そのうち19%が睡眠の質に問題を抱えていることがわかりました。
また、嚥下障害リスクがある高齢者は、男性で睡眠の質が悪い、睡眠に対する不満がある、不規則な睡眠をしているといった傾向が見られました。
女性では、嚥下障害リスクが睡眠時間の短さ(6時間未満)と関連していました。
嚥下機能の低下は、眠りの浅さや中途覚醒などの問題を引き起こしやすく、これは単なる「眠れない」といった悩みにとどまらず、全身の機能低下や認知機能への影響にもつながるリスクがあるとされています。
つまり、嚥下機能を維持することが睡眠の質を保ち、日々の活力や健康を支えるうえで重要な要素であることが示されたのです。
嚥下機能の低下と健康指導の可能性
今回の研究では、嚥下機能を維持することが、高齢者の睡眠の質向上にもつながる可能性が示唆されました。
例えば、嚥下機能を保つためには日頃の口腔体操や定期的な口腔ケアが効果的です。
また、摂取する水分や食事を意識してむせにくい食事の工夫や口腔筋力のトレーニングを取り入れることも嚥下機能の維持に役立つとされています。
これにより睡眠時の誤嚥や咳込みのリスクが減少し、自然な眠りを取り戻すことが期待されます。
また、嚥下機能の低下には、加齢に伴う口腔内の乾燥や咀嚼力の低下も関係しています。
これらの要因に対処するため、口腔ケアの重要性が増しています。定期的な歯科検診を受け、口腔内の環境を整えることで、口腔と全身の健康を保つことができます。
三浦歯科医院での取り組み
当院では、「口腔から全身の健康を守る」という理念のもと、噛み合わせや定期検診にも力を入れています。
今回の研究結果からもわかるように、口腔内の健康は単に歯や歯茎の問題にとどまらず、全身の健康に大きな影響を及ぼします。
特に高齢者の方々には、噛む力や嚥下機能を保つことで、食事や睡眠といった日常生活の質を維持することができるため、定期的なメンテナンスを推奨しています。
まとめ
今回の研究から、嚥下機能が睡眠の質に影響を与えるという新たな知見が得られました。
睡眠の質向上は、日常生活の満足度にも直結します。口腔内の健康管理を徹底し、睡眠の質を保つことは患者様の健康寿命を延ばすうえで大切な役割を果たします。
三浦歯科医院では、嚥下機能を維持するための定期的な口腔ケアに加え、噛み合わせの調整などで患者様が快適な毎日を送れるようサポートしています。
口腔ケアが全身の健康に及ぼす影響をしっかりとご理解いただき、一緒に健康な生活を維持していくためのサポートをさせていただきたいと考えています。
睡眠に関するお悩みの患者様も、まずは気軽にご相談ください。
スタッフ一同笑顔でお待ちしております。