歯周病と糖尿病の関係性って？
皆さん、こんにちは。
千葉県市川市にある三浦歯科医院の院長三浦靖です。
年の瀬も近づいてきて、慌ただしくなってきております。
今回は日本人の8人に一人が患っていると言われる糖尿病についてのお話です。
前々から糖尿病と歯周病には深い関係があると言われていました。
そんな中、今年の9月に大阪大学大学院の研究チームは、『糖尿病集中治療が歯周病に及ぼす影響』を発表しました。
この研究によって、糖尿病の治療が歯周病の改善にもつながる可能性が示されたのです。
糖尿病と歯周病の関係性について
糖尿病と歯周病には深い関係があることがこれまでの研究でわかっています。
糖尿病患者は健康な方に比べて歯周病の発症率が2～3倍高く、血糖コントロールが悪化すると歯周病も悪化しやすいことが知られています。
また歯周病の治療を行うと、血糖コントロールが改善することもわかっています。
しかし糖尿病の治療自体が歯周病にどのような影響を与えるかについては、実はこれまで明らかにされていませんでした。
研究概要と方法
大阪大学の研究グループは、29名の2型糖尿病患者を対象に入院下での糖尿病集中治療を行いました。
この治療では血糖コントロールを集中的に行い、その前後で患者の全身状態や歯周病の炎症状態を測定しました。
研究チームは歯科的な介入を行わず、糖尿病治療のみでどのような変化があるかを詳細に解析しました。
糖尿病治療がもたらした歯周病の改善
研究の結果、糖尿病治療により血糖コントロールの改善に伴い、歯周病の炎症状態も改善することが確認されました。
具体的には歯周病の炎症状態を示す指標であるPISA（Probing Pocket Depth, PPDを基にした歯周炎症面積）という指標が改善したのです。
さらに患者のインスリン分泌能や糖尿病合併症の重症度が、歯周病の改善に関連していることもわかりました。
糖尿病治療前のインスリン分泌能が高い患者や、糖尿病性神経障害や末梢血管障害の程度が低い患者ほど、歯周病が大きく改善する傾向が見られました。
医科歯科連携の重要性
この研究結果は糖尿病の治療が歯周病の改善にもつながることを示しており、医科と歯科が連携することの重要性を改めて強調しています。
糖尿病初期の段階から医科と歯科の双方で連携し、患者様の全身の健康をサポートすることが歯周病の発症や進行を抑えるうえで効果的であると考えられます。
糖尿病が疑われる患者様には早期に糖尿病治療を行い、歯科的なサポートも併用することで全身と口腔内の健康を維持することが可能です。
三浦歯科医院での取り組み
三浦歯科医院でも『口腔から全身の健康を守る』を理念とし、患者様が生涯を通して健康でいられるよう様々なサポートを行っております。
特に定期検診を行っていくことで、虫歯予防だけではなく歯周病の悪化を防ぐこともできます。
糖尿病の治療が、歯周病を改善するように、歯周病の治療が糖尿病を改善することもわかっています。
歯周病があると、どうして血糖値が高くなるの？
なぜ、歯肉の炎症である歯周病が糖尿病に関わってくるのでしょうか。出血や膿を出しているような歯周ポケットからは、炎症に関連した化学物質が血管を経由して体中に放出されています。
中等度以上の歯周ポケットが口の中全体にある場合、そのポケット表面積の合計は掌（てのひら）と同じ程度と考えられています。歯周ポケットの中身は外からはなかなか見えませんが、手のひらサイズの出血や膿が治療なしで放置されていると考えると、からだ全体からも無視できない問題であることが理解できると思います。
ポケットから出て血流にのった炎症関連の化学物質は、体のなかで血糖値を下げるインスリンを効きにくくします（インスリン抵抗性）。そのため、糖尿病が発症・進行しやすくなります。
歯周病治療で血糖値が下がる！
最近では歯周病と糖尿病は密接に関連していると言われており、歯周病の治療をすると血糖コントロールが改善するという研究成果も数多く報告されています。
「歯周病の治療」とは、患者さん自身のブラッシングによるプラークコントロールをしっかり行い、歯科医院で炎症の原因となっている歯石を確実に取り除く（スケーリング）ことです。そうすることで歯肉の炎症をコントロールできればインスリン抵抗性が改善し、血糖コントロールも改善するということが、日本での研究を含めた多くの臨床研究で報告されています。
一方で、全ての症例で血糖値の低下が生じないことも明らかになっており、どのような糖尿病患者さんで血糖値が下がりやすいのかを調査した今後の研究成果が待たれています。
糖尿病や歯周病にお悩みの患者様も、まずは気軽にご相談ください。
スタッフ一同笑顔でお待ちしております。
